ホラー番長トーク、清水崇×宮下ともみ×小中千昭×高橋洋

11/7(日)『稀人』上映後に行われたスペシャトークセッションvol.2の模様です。


詳細は写真付きで俎渡海新聞にレポされてるので、まずは↓こちらからどうぞ。
幻の俎渡海城「俎渡海新聞第六号」


以下、若干ネタバレしてるのでまだ観てない人はお気をつけて


アメリカから急遽帰国が叶った清水崇監督も参加してのトークショー。あちらでの初監督作品『The Grudge』が、全米週末興行2週連続第1位を獲得した直後ということもあり、『The Grudge』について話をふると、会場からはオメデトウの拍手が。「どこまで話してよいのかわからないので、今日は『稀人』のみで…」ということで具体的な話についてはやんわり断られたが、アメリカの観客もあれ見て笑うのか気になってしょうがない様子の小中氏には、「向こうの客は、「ひぃ!」と引いた後にすぐ笑う。反応する箇所は日本と同じ」と答えていた。


今回、少女と中年男の吸血物語を撮る事になった清水監督だが、小中氏が書いてきた脚本の少女は、映画より年齢がもっと幼く、そのまま映像化したのでは倫理的にちょっとヤバイということで設定を上げたらしい。「誰かさんのようにまだ捕まりたく無いですから」と冗談混じりに話していた。高橋洋氏の仕掛けで、念願の初タッグとなった清水・小中両氏だが、同時期に『The Grudge』の撮影が入ってしまったことで、まともな打ち合わせは1回しかできず、それがとても心残りだったと語る両氏。清水監督が『稀人』のために日本に滞在できる時間はわずか2週間だったそうで、渡米中に日本にいるスタッフにいろいろと準備してもらい、帰ってくるやいなや8日間で撮り上げ完成させたらしい。撮り上げた当初は撮影期間の短さを心配した監督だったが、他もみんなそれくらいだと知り安心したとのこと。


当初の予定に反し、「ボール投げっぱなしになってしまった」と語る脚本家の小中氏は、出来上がった『稀人』を観て、塚本晋也宮下ともみが主役の二人を演じてくれたおかげで想像以上にラブストーリーに仕上がっていたと感想を述べていた。俎渡海新聞のレポにもあるように、小中氏は、自分が昔目にしたものを『稀人』の脚本にいろいろと反映させていたのだが、清水監督はそういう話をじっくり聞く時間ももてないまま撮影に突入しなければならなかったため、途中から「小中千昭をギャフンと言わせる」方向へと気持ちを切り替えたらしい。事前に『怪奇大作戦』の「吸血地獄」が下敷きになっている*1ことなども聞かされていたため、再度見直したりもしたけれど、そう言った事情もあって、結局は無視することに決めたそうだ。


宮下ともみ演じる<少女F>は狼少女のような役で、撮影中はほぼ四つんばい状態。その動きに慣れるため、ともみちゃんは撮影に入る数日前から“デロ”役を演じた二人*2のもとに通い、稽古をつけてもらってたそうだ。「体中筋肉痛になりました」と吐露しながら、四つんばいの動きは「(自分より)監督の方が上手だった」と語るともみちゃんであった*3。また、本作で初ヌードを披露しているわけだけど、実は監督自身もヌードを撮るのはこれが初めてだそうで、「清水が女性の裸をみずみずしく撮れるわけがない」と周囲から散々言われたらしく、それに立腹した監督は「『絶対キレイに撮ってやる!』と心に誓ったそうだ。


清水崇なのに笑いが少ない!」と突っ込まれると、「別の企画でやってる*4のでこちらではやらなかった」とかわす清水監督。映画番長への参加を持ちかけられた当初は、“一族皆死に絶えてただ一人生き残った男が、廃墟と化した実家に舞い戻り、そこで妄想にかられてゆく話”を撮ろうと思っていたそうで、それ故か、小中氏のボールを受けて撮り上げた本作については、“中年男の妄想版E.T.*5と自ら評していた。


映画の冒頭に、アパート2階のくもりガラスの窓越しに女性らしき姿が見えるというシーンがあるのだが、一見、エキストラでも全然OKなこの役を、清水監督はわざわざ女優の藤井かほりに演じて貰ってる。しかしこれ、正直な話、女性と言うことがかろうじて分かる程度で、誰がやっても同じ。藤井かほりだと識別できる人はまずいない。わざわざ彼女に頼む必要があったのかと問うと、「本人からもそう言われたんですけど、『大丈夫です。わかります。』と言って撮影した」と話す清水監督に、「あとで本人に謝っておくよ」と苦笑いの小中氏だった。


最後に近況報告。宮下ともみちゃんは小中氏の弟さんが監督を務める『ウルトラマンネクサス』に出演予定。清水監督は『怪奇大家族』の宣伝と、同日夜に放送されるCX『EZ!TV』で「『The Grudge』特集があるので良かったら見てください」と告知していた。そういえば『怪奇大家族』の主演俳優である高橋一生も『稀人』を見て「大感激してくれた」らしく、「これはホラーじゃないですよ! 純愛映画ですよ!」と誉めてくれたそうだ。でも、当の清水監督はそれを聞きながら「いや、これはホラーなんだけど…(汗)」と軽くつっこんでたらしい。



そんなわけで、立ち見満員御礼の中、トークショーはお開きとなりました。

*1:脚本を書いた小中氏は当初「吸血地獄」のことなど全く意識しないまま書いており、脚本を読んだ人に後から指摘されて気づいたんだそうだ。

*2:普段、パフォーマンスをしてる人たちらしい。

*3:ということは伽椰子の階段降りも、監督が実際にやってみせてたのか…

*4:テレ東の深夜ドラマ『怪奇大家族』のこと。

*5:監督は『E.T.』が大好きらしい