第14回映画祭TAMA CINEMA FORUMで上映された『アップルシード』『スチームボーイ』『イノセンス』3本立てに行ってきました(『イノセンス』以外は初見)。開場5分前に着いたのに、既に80人ぐらい並んでて、300席あるホールにもかかわらず、始まる頃には座席間の通路にまで人がみっしり。「1200円で3本立て」の威力を思い知りました。
『アップルシード』
「いくら三輪明日美がモーションキャプチャーで参加してるからって、あの絵だけは受け付けない!」ということで、公開中は全く眼中になかった本作。原作も未読で思い入れ無し。しかも宣伝キャッチコピーが「戦いが終わったら、母になりたい」って…(汗)。こういう機会でもなければ、テレビでやるまで絶対見なかったのに、ところがどっこい!な作品でした。結論としては、公開時に観に行っても良かったかなと思えるほど面白かったです。絵に関しては当初の予測通り全く受け入れられなかったけど(特に2D化された人物)、最近の大人向け劇場アニメにしては珍しく、扱ってるテーマや話の構成が王道中の王道、定番中の定番だったのが逆に良かった。ドラマ作りの基本はしっかり押さえてあるので、絵が気に入らなくても物語にだけ集中していられるし、アクション多めで、テンポも良い。泣きどころのメロドラマだってある。(劇中では一度も使われなかったけど)「戦いが終わったら、母になりたい」というキャッチコピーが、先の展開を知る上でかなり重要なキーになっていて、小出しにされるヒントを元に「“アップルシード”とはなんぞや」ってのを探るのも楽しかったし、ネタがばれても話が二転三転するので、最後まで飽きることなく楽しめた。いくら絵がイヤ!って言っても、見せ場であるクモ型巨大ロボの映像については違和感なく圧巻。とにかく、話が個人的にとてもツボだった、全てはこれに尽きます。お母さんが死ぬシーンなんて、ホログラムってだけで先の展開が細部まで読めちゃうんですけど、普通に泣きましたもん。もちろん、恋人が死ぬとこでも(そのあとのあれは頂けないけど…)。ほんとにうまいことラストまで娯楽映画としてまとめてたので、エンドロールが出てきたとこでニンマリしてしまったぐらい。サントラがどうしても欲しくて、帰りがけにCD屋に寄ったのに売ってなくてがっくり。あの2D化人物だけなんとかなってくれれば…(といってもそれが目玉なのだから仕方がない)。
『スチームボーイ』
『アップルシード』の後にこれ観たわけですが、なんか大友さん一人、時代に取り残されてしまったようで…。ラピュタやコナンの時代ならいざ知らず、いま「科学技術の進歩がうんたらかんたら」言われても、時代遅れというか、ピンとこないです。ドラマになりそうな人間関係をいろいろと設定したにもかかわらず、どれひとつとしてまともにじっくりと描くことなく終わってしまったのも勿体ない。「科学の功罪」についての描写も口だけだし、ドラマがあまり無いのに見せ場まで延々と引っ張るから、スチーム城出走までがやけに長く感じてしまった。お父さんがスチーム城と合体して、ようやく始まるかと思ったら、「圧倒的な力」をほんのちょっと見せつけただけで内輪の話に移ってしまい、もっと暴走、破壊、混沌、崩壊と怒濤の力業でたたみ掛けてくれればと、なんだか物足りない気分でいっぱいでした。人が死ぬシーンが少なかったのは、子供向けというのを意識してのことなのだろうか。だったらもっと戦争を楽しんでる大人達をいやらしく描いた方が良かったのでは。お父さんぐらいはムスカ程度に壊れろよと。ユーモアばかりで押されても…。これは映画じゃなくて、できれば連続テレビアニメでじっくり描いて欲しかったですね。2時間におさめるには人間関係詰め込みすぎ。父親と祖父が対立するに至った過程や、祖父とスティーブンスのライバル関係、学校でのレイ、スカーレットと家族の話など、面白そうなサイドストーリーいっぱいあったのに、描く気がないなら中途半端に匂わさず、もっとシンプルにまとめて欲しかったです。なんか物足りない、物足りない、物足りない。。。
『イノセンス』
これは2度目なので、特にまた改めてというのはないんだけど、『アップルシード』が出したポジティブな未来に比べると、やっぱり押井さん、寂しいです。。。