ホラー番長トーク、高橋洋×小嶺麗奈×黒沢清

10/31(日)『ソドムの市』上映後に行われたスペシャトークセッションvol.1の模様です。


詳細は写真付きで俎渡海新聞にレポされてるので、まずは↓こちらからどうぞ。
幻の俎渡海城「俎渡海新聞第四号」


以下、若干ネタバレしてるのでまだ観てない人はお気をつけて


書いてないあたりをフォローすると、「舞台挨拶で言いたいことのほとんどを喋ってしまった」と言うことで、「みんなもどうせ聞きたいのは黒沢さんの感想だろう」と話を向ける高橋監督。それを受けて、『ソドムの市』を「ドラマはどうでも良くて、撮りたい映像を延々と繋いでいっただけの、これぞデビュー作!といった非常に清々しい作品だった」と評する黒沢さん。どうやら黒沢さん、『ソドム〜』を観てから随分時間が経つのか、ひとつひとつのシーンは覚えていても、シーンの意味やそれがどういう風につながってるのかはまるで覚えてないらしく、「2回目に花嫁が死んだのはどうしてでしたっけ?」とか「小嶺さんが廊下を走るシーンが良かったんだけど、あれは何かを追いかけてたんでしたっけ?」といった具合に、「黒沢さん、もう1回見直した方がいいんじゃない?」とツッコミたくなるような質問をいろいろとしてました(笑)。(俎渡海新聞に書かれてあるとこ以外だと)黒沢さんは、トイレの扉を挟んで市(いち)とキャサリンが手をつなぐシーンが気に入ったご様子(でも、何故二人が手を繋ぐことになったのかはよく覚えてないとのこと)。ちなみに、高橋監督曰く、麗奈ちゃんが廊下を走るシーンは、助監督の安里さんといろいろ相談してるなかで「こんなのもありだよね」ということで実現したらしい。


映画の中では、模型で作ったB29が、同じく模型で作った格納庫から出てくる際に、入り口の端を羽根の先でつきやぶり出撃してゆくというギャグシーンがあるんだけど、実はこれ、ギャグでもなんでもなく、トラブルから生まれた苦肉の策だったとカミングアウトする高橋監督。なんでもB29と格納庫を作ったのが別の人間らしく、いざ出来上がって持ってきてみたら、倉庫の入り口がB29より小さくて、両翼の先が入り口に引っかかって出てこれないことが判明。『ソドム〜』の撮影では「絶対怒らないようにしよう」と心に決め撮影に臨んだ高橋監督だったけど、さすがにその時は「なんで作る前にちゃんと寸法を打ち合わせしとかないんだ!」とブチ切れそうになったとか。しかしグッとこらえ、入り口をぶち破ってB29が出撃するという風に設定を変え、あのようなシーンが出来上がったとのこと。予想外の出来事は他にもいろいろと起こったようだけど、それを乗り越えるのも楽しかったと語る高橋監督。


麗奈ちゃん演じるテレーズにはすごくインテリジェンスを感じると語る黒沢さん。この人だけは狂ってないというか、圧倒的に正しいことをやってるように見えると言ってた。役を演じる時は役を体内に降ろすような感じなので、すごく疲れると答える麗奈ちゃん。その時は、霊感も上がってるらしく、いろいろと見ちゃったりもするそうで、「「演じることが楽しい」という役者さんが信じられない」と語っていた。


撮影の最後は27時間ぶっつづけだったらしく、「監督は立ったまま寝てたので、寝てるのか考え事をしてるのか、話しかけていいものかどうか迷った」と話す麗奈ちゃん。


『ソドム〜』には万田邦敏監督も出演してるんだけど、高橋監督は出演してもらっている手前、万田さんにも作品を見せたんだそうだ。そしたら、「あんなしっかりした脚本を書き、幽霊の立ち位置にすら延々と拘るような人が、自分で撮るとなんでこうなっちゃうわけ?」と言われたらしい。また、Jホラーシアターの一瀬プロデューサーにも見せたところ、こちらはもっとヒドイ。「誰にも感情移入できない!」とケチョンケチョンだったそうで、「登場人物に感情移入できなきゃだめですかねえ」と悩む高橋監督。「『リング』の脚本ではちゃんと感情移入させてたじゃないですか、お母さんに」と答える黒沢さん。


最後に、高橋監督が「これからも世間から求められる映画ではなく、自分が作りたい映画をどんどん作っていくつもり。そして「こんなのもいいね」と思ってくれる子供達が増えれば日本も変われる」と締めの言葉を述べて、この日のトークショーはお開きとなった。