『感染』『予言』を観た(@シネコン)

先日、近所のシネコンで観てきました。客は7割入りぐらい。週末だったので10代中心、男女半々といったところ。


感染 プレミアム・エディション [DVD] 予言 プレミアム・エディション [DVD]


『感染』(監督:落合正幸
冒頭のなんともいえない病院の雰囲気はとても良かった。いくら経営悪化で院長にとんずらされたからって、あれは異常。絶対この病院おかしい、何かあるぞってドキドキワクワクさせてくれる。大量の患者、睡眠不足の看護士たち、下手糞なくせにやる気だけ先走る新米医師に新米看護士、怪しげな急患、そこで起こる医療事故・・・。様々な出来事が立て続けに起こり、それらが一段落、ホッと安堵した瞬間、南果歩が見つけてしまうんだ。「先生、あの患者、なんですか?」。こうして物語はメインステージへと突入するわけだけど、次々と病院職員が得体の知れないモノに感染し事態が切迫してゆく割には、メリハリに欠けるのか終始間延びした印象がつきまとう。佐藤浩市高嶋政伸が得体の知れない感染源を探しに病院内を探索するんだが、突如現れて襲われるかもしれないという緊迫感がまるで感じられないのも×。それと、本作は珍しく「音」で威かす演出をしない。食傷気味だからあえてしなかったのかもしれないが、だれるぐらいなら、こちらの気を引き締めさせるためにも何箇所か入れてくれた方が良かったのにと思う。


キャスティングを見て一番期待してたのが南果歩。彼女は表情が人形っぽい上に、金属音みたいな声してるんで、あちら側の人に回るとはまるだろうなと思ったらその通りだった。使い方が控え目で少し物足りなかったけど、彼女絡みのシーンは大概好き(気絶してた彼女が背後ですーっと起きあがるところとか、ベッドに寝てるはずの彼女が部屋の隅で立ってるシーン等々)。星野真理はいまいちかな(台詞回しがちょっと…)。彼女をいじめる先輩看護婦役の真木ようこは拾いものだった。山崎樹範は好きな役者なんだけど、あの役の使い方はないだろ。全然物語に絡まないし、あんなとってつけたような後日談付け加えるなら、あの縫合ネタいらねー。


全体的に見ると、冒頭の雰囲気をそのままいかし、普通に<集団ヒステリー>ってオチに向け物語を構築していった方が良かったんじゃないかと思う。映画自体はそれなりに面白かったけど、オチが曖昧で消化不良。


以下、ネタバレします


搬入口に置かれた急患だけど、実際の世界では救急隊員がきちんと連れて帰っているので、南果歩があの患者を見つけた瞬間から妄想ワールドが始まるということか。全てが佐藤浩市の妄想だったってオチなら、辻褄のあわないところも「彼の妄想だから」で済ませられたのに、病院内にいなかった羽田美智子に感染させてしまったことで物語に破綻が生じ恐怖の対象が散漫になった気がしてならない。佐野史郎は、<罪>という意識を通して感染していくと言った。一番最初に妄想を発生させたのが、搬入口にいる患者を見つけた南果歩だとしたら、彼女から他の人間へと感染していったことになる。佐藤浩市高嶋政伸木村多江、真木ようこは、南果歩と共に3号室にいる患者の死亡事故を隠蔽しようとしたことで、事故とはいえ、殺人、殺人教唆に近い罪の意識を抱えている。星野真理は、真木ようこから「3号室の患者がベッドから落ちたのはあんたが練習台に使ったせいだ」と言われ、事故の隠蔽に手を貸さなかったとはいえ、事故の発端を作ったと言うことで、やはり殺人に近い罪の意識を抱えている。しかも皆、極度の疲労と睡眠不足で、妄想したり幻覚を見るのに十分な下地は整っている。よって罪の意識から妄想に襲われた彼らが次々と自殺や殺し合いをし出すというのはわかるんだ(劇中のニュースでは佐藤浩市が全てやったかのようなことを言ってたけどそれは無理)。しかし羽田美智子はどうだろう。精神科医だから他の人に比べれば仕事も緩やか。家に帰り休養する余裕もある。また「誰かを殺した」と自分を責めるほどの罪悪感も抱いていない。そんな彼女が感染してしまうのは安易すぎる。モロ師岡山崎樹範の縫合に纏わるエピソードもそう。山崎樹範は最後まで感染者と接触しなかった。精神的に極限状態にあったのは事実だが、罪の意識はない。感染の恐怖を扱ってるのにそれとは全く別の法則で動いてる人間のエピソードを盛り込んでしまったのでは、恐怖の対象を何にしたいのかさっぱりわからなくなってしまう。


ネタバレ終了


演出は全般的に『催眠』を撮った監督だなあという印象(『催眠』は『パラサイト・イヴ』に比べたら全然好きです。菅ちゃん出てるし)。お話をもうちょっと詰めてくれれば、、、。



『予言』(監督:鶴田法男)
原作は言わずとしれたつのだじろうの『恐怖新聞』。マンガの方はだいぶ内容忘れてます。気付いたんだけど、たぶん最終巻読んでない(汗)。映画の方は鶴田監督らしく、切ないハッピーエンド(いや、アンハッピーエンドか)で締めくくられるんだけど、見せ場はそこに至るまでのたたみ掛けだろうね。恐怖新聞の悪趣味なお遊びに、何度も何度ももがき挑む三上博史。それもだめなの? これもだめか? ここまで戻れば。いや、まただめだ。どうしたらいいんだ。また振り出しだ。まだやらせるのか。今度もダメなのか? いや、、、そうか。これか。こういうことだったのか・・・。無限地獄から抜け出し安堵する三上博史にウルッともらい泣きしました。


三上の妻役を演じるのが酒井法子。ノリピーをホラークイーンと呼ぶのには異論がある。台詞の端々に残る未だ抜けないアイドル喋りが鼻につくし、ビジュアル的にもいまいち。ただスクリームクイーンとしては天下一品だと思う。今回も“悲鳴”は非常に良かった。だから次に出す時は、台詞少な目でお願いします。それからあの女の子。娘役を演じた井上花菜ちゃん。車の中で叫び、燃え上がる炎に怯える演技は見事としかいいようがない。もちろん炎に包まれるシーンは合成なんだけど、炎に気付いた時の表情がえらくリアルで、鶴田監督がどうやって彼女からあの表情を引き出したのか興味がある。三上博史はもうちょっと抑え目でもよかったかも。霊能者役の吉行和子の出で立ちが宜保愛子にそっくりで笑った。高橋洋はおいしすぎ(笑)。


『感染』に比べると緊張感を持続しながら最後まで観られたように思う。途中、「え、それはないだろ」ってアホみたいなシーンもあったけど(笑)。恐怖新聞有機的な描写、ビタッと貼り付くシーンはキモイ。消える時にもう一工夫欲しいところ。


結局、恐怖新聞が届いたらお終いなんだろうな。抵抗しても身を任せても最後に待っているのは地獄。だったら自分はどちらを選ぶのか。黙って受け入れるか、もがいてみるか。全ては自己満足かもしれない。誰かが助かれば、他の誰かが死ぬ。そうやって運命は帳尻を合わせてくるのだ。


エンディング曲も映画にマッチしてて良かった。テレビ放映時にも流して欲しいけど無理なんだろうな。『リング0〜バースデイ』でも容赦なくカットされたし。他の映画はいいけど、『リング0』はあの余韻が命なんだよ。曲カットしたら興冷めなのに、わかってないんだから。


さーて、次回のJホラーシアターは誰と誰の組み合わせでくるのかなー