『マインド・ゲーム』を観た(@吉祥寺バウスシアター)2度目(※ネタバレあり)

昨夜、吉祥寺バウスシアターで2度目の『MIND GAME』を観てきました。


初見の感想、およびシネクイント楽日に行われた湯浅政明×杉井ギサブロー×田中栄子トークショーの模様は↓こちら。


 それでは本題。


前回見た時は正直、何を喋ったらいいのか言葉が出ないぐらいだったんだけど、2度目観に行ったら喋りたくて喋りたくてしょうがなくなった。初めて見るという友人連れて行ったのだけど、放心して頭の中がまとまってない友人相手に、電車の中で延々と語り倒してしまったぐらい。1度目は映像とテーマとパワーに心動かされたけど、2度目は全然違うね。フラッシュバック・エピソードの意味が理解できた分、キャラクターの心情が前回より伝わってきて、鯨から飛び出した瞬間、うるっと涙腺ゆるんでしまった。


観てない人も、一度観た人も、今日がラスト上映! お暇なら是非劇場に足を運んでくださいませ。
劇場は中位のクラスに変わっていたので、105人入るから、上映ギリギリでも間に合うと思う(たぶん)。



感想(2回目)追記:
1度目はほんと漠然としか把握してなかったんだなあと、2度目観て思い知らされました(苦笑)。唐突に思えた行動の意味、なんとなくしかわかってなかった登場人物のつながりや想いなどがたくさん見えてきて、初回とは別の目線で楽しめたし、前とは違い、物語の部分で涙腺ゆるんだ。「初見でちゃんと伝えられないんじゃダメじゃん」って人にはむかつく構成かもしれないけど、個々のエピソードをフラッシュバックに詰め込まないと、あそこまでの勢い、パワーを出すのは無理。そのせいで話がよくわかんなくなっても、制作陣が一番に見せたいのはそこではないというか、観た人がテンション高まって元気になれば本来の目標は達成してるんだと思う。だから、1度目で満足してる人は2度観る必要はないのかもしれない。でも、何かひっかかるところが在るのなら見直したらいい。そこに答えは存在してる映画だと思います。


前に観た時はクジラの中の話が少し長いかなと感じたけど、今回は全然そんなことなくて、逆にクジラに飲み込まれる前までの方が長く思えた。それだけ初見時は余裕がなかったということなのか(笑)。


ネタバレ
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主役は西君だけど、1回目ですごく感情移入したのはヤン姉ちゃんだった。彼女は家族の生活のために自分のやりたいことをずーっと諦めてきた人なんだよね。それが、クジラの腹に入り外界と隔絶されたことによって、自分の道を取り戻し活き活きとしだすんだ。誰よりも早く。皆が絶望とホームシックに打ちひしがれてる時にバサッと髪切って弱気ふっきったその姿がかっこよくて、以降ずっと心鷲掴みされてた。逆に妹のみょんちゃんは自分的にいまいちな存在。姉ちゃんに比べると周囲の加護を受け恵まれてきてるみょんちゃんには、漫画家になりたい西くん、芸術家になりたかったヤン姉ちゃんと違い、これをやりたいからクジラの外に出たいんだって明確な目標や意志が見えてこなかった。二人が出るからついてゆく、みたいな。だから、「このままここにいたんじゃダメだ。外へ出なきゃ」とボートに集まってきた西君、ヤン姉ちゃんにまじり、彼女が当たり前のように自らの意志でそこにやってきたことに違和感を感じた。ところが、今回観たら、みょんちゃんにもいろいろとやりたいことがあったんだなというのが見えてきた。水泳選手になりたかったっていうのは初見でもわかってたことだけど、それはもうこの年になっちゃったら叶えることは無理。乳もでかくなっちゃったし、外に出たからといって、水泳選手として活躍できる旬はとっくに過ぎてる。しかしみょんちゃんには、その昔、水泳以外にも好きなものがあった。クジラの中にいるとき、捕まえた魚を見て「絶滅種やー」って図鑑めくりながらはしゃいでたけど、あれはただの物珍しさだけではしゃいでたわけじゃない。みょんちゃんは元々、海の生物が大好きだった。だから「絶滅種」を目撃できたことのすごさをちゃんと判った上で喜びはしゃいでたんだ。水泳が好きだったのも、海の生物に触れたいという想いから派生してるんだろうと思う。高校に行くころは借金取りに追われる生活で、そういう夢もどこへやら消えてなくなっちゃったけど…。そう思ったら、なんかみょんちゃんが愛おしく思えてきた。


クジラから脱出する際、化粧をしてたヤン姉ちゃんがじいさんにも口紅塗ってあげるんだけど、そのシーンを見せられるまで、自分はじいさんがゲイだって全く気付いてなかった。西君に告白しろよーとばかりに前に押し出されたときも「え? いつのまにそんなことに?」ってすごく驚いた。途中で風呂場覗きシーンがあるからすっかり惑わされてたんだな。2回目見たらわかったよ。出会ったその瞬間から、じいさんは確かに西君しか見てなかった(笑)。それに、じいさんたら、西君に夜這いされる夢(妄想?)を見ながら毛布抱いてアッハンウッフンなってるじゃん(あのシーンも初見では全然意味判ってなかった…汗)。2回目のエンディングでじいさんの生い立ちについての映像がフラッシュバックされるんだけど、じいさんはちっちゃい頃から女の子になりたかったんだね。ちんちん股にはさんで「おんなのこー」ってやってる幼児時代のじいさんの姿があったし、レビューだか宝塚だかの看板を眺めてるシーンもあった(ような気がする)。でも、じいさん、戦争に行った時、教会に飾ってある2枚の絵をみちゃったんだ。そこにはゲイっぽい仕草をしてる神父の姿と、その神父が業火に焼かれて爛れちゃった絵が描かれていた。「同性愛者になると地獄に堕ちるぞ」っていうおしえだね。これを見ちゃったじいさんは、自分の気持ちを封印して女性と結婚し、息子を一人もうけるわけだが、その息子が、眼鏡かけたヤクザのアニキだった。スキンヘッドのサッカー野郎・あつ君に「うんこちんこしっこ」って10回言わせてぶっ殺した後、平然と焼き鳥喰ってたあの眼鏡のアニキです。


アニキは子供の頃「タイムボーイ」というヒーロー・アニメが大好きだった(あつ君を殺した後(?)、アニキがため息混じりにタイムボーイに絡めた台詞を吐いているシーンがある)。アニキは父親であるじいさんにタイムボーイの服やベルトが詰まったおもちゃの鞄を買ってもらったが、じいさんは大事なヤクの取引にでかける際、タイムボーイセットの入ったその鞄を、ヤクの入った鞄と間違えてそのまま取引先に持っていく。そして鞄ごとクジラに飲み込まれてしまい、以後30年間、クジラの腹の中で独りぼっちで暮らすわけだが、西君たちと出会い、一緒にボートで脱出する際、なんとタイムボーイのベルトを腰に巻いてきてるんだよね。アニメ「タイムボーイ」では、ベルトの針が反時計回りに回ると時間を巻き戻せるって設定になってるんだけど、じいさんの過去の出来事がフラッシュバックする2度目のエンディングの直前、じいさんの腰のタイムベルトも針が逆回転してた。


ちなみに、やん&みょん姉妹の母ちゃんはアニキの元恋人。若い頃、ディスコでブイブイ言わせてた今の父に横取りされた。でも、結婚して借金で首が回らなくなった時、母は家族を捨てて昔の恋人であるアニキの元へ。二人で東京へ駆け落ちするはずだったが、アニキは現れなかった。あの時、駆け落ちできてたなら……。


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ネタバレ終了


2度目でようやく話の7割ぐらいは掴めた気がする。でも、捨て犬の話なんかはまだよくわかってないので、あと2回ぐらいは見ないと無理そうかな。(追記:DVDで再見。捨て犬に餌をやってたのはヤン姉ちゃんが先だったのか)


というわけで、ゆくぜ再上映! 今度は下高井戸シネマだ。上映は、、、12月上旬ぐらい?


ちなみにDVDも発売されます。通常、スペシャル、パーフェクトの3種類(12/22発売)。
マインド・ゲーム [DVD]  マインド・ゲーム スペシャルBOX [DVD]  マインド・ゲーム パーフェクトコレクターズBOX [DVD]  



-追加-
マインドゲームに関する関連過去記事一覧は↓こちら。文化庁メディア芸術祭賞をはじめさまざま賞を受賞しております。
映画『MIND GAME』関連過去記事一覧


-追記(2013/5/5)-
文化庁メディア芸術祭で大賞を受賞した理由および審査委員長を務めた富野由悠季監督の講評はこちら↓。

公開からまもなく10年が経とうとし、商業アニメにおける実験的な映像手法が当たり前になった現代において、「観たけど何故この映画がそこまで傑作だと持ち上げられるのか理由がわからない」という人はこの映画が生み出された2004年当時の時代背景を知るためにも是非ご一読を。


-追加(2017年)-
待望のブルーレイが発売されました。amazon等では取り扱ってないので、アニメーションを制作したスタジオ4℃の通販サイトからどうぞ。

http://studio4c.shop-pro.jp/?pid=118851020
パッケージ内容
・『マインド・ゲーム』本編 Blu-ray
・『マインド・ゲーム』本編 DVD
・ 20ページブックレット付き スペシャルパッケージ
・ 特典映像 設定資料(キャラクター設定、美術設定、他)