TBS『日本のこわい夜』を見た

TBS水曜プレミア枠『 世界最恐JホラーSP日本のこわい夜』を観ました。感想の前に一言。Jホラーシアターよー、『くも女』の監督は清水崇じゃなくて、中村義洋じゃないか。間違えてるぞ
というわけで、作品ラインナップは以下の通り。

イントロダクション:
「こわい話、聞きたいですか?」
(監督・脚本:中村義洋 共同脚本:鈴木勝秀 出演:白石加代子/森下能幸/我集院達也)
EPISODE1:
「くも女」(監督・脚本:中村義洋 出演:遠藤章造/深浦加奈子/岡田義徳/真木よう子
EPISODE2:
「すきま」(監督:鶴田法男 脚本:高山直也 出演:中村俊介/山崎樹範/嶋田久作
EPISODE3:
「大生首」(監督・脚本:白石晃士 共同脚本:横田直幸 出演:山田優/麻丘めぐみ
EPISODE4:
「金髪怪談」(監督・脚本:清水崇 出演:杉本哲太
EPISODE5:
「予感」(監督:落合正幸 脚本:大野敏哉 出演:香川照之/小島聖


各話のあらすじは水曜プレミア枠公式サイトを参照されたし。山田優、ココリコ遠藤、深浦加奈子のメッセージもあります。


んで、感想。

若手が揃って「くも女」「大生首」「金髪怪談」って妖怪系のタイトル付けてきたので、別の意味で期待してました。しかも、語り部があの白石加代子(嬉)。ついに御大登場ですからねー。結論としては、私の個人的な期待は外れてなかったけど、「これがテレビで限界の恐怖だ!」というのはどうみても煽りすぎというか、逆効果。だって、今回、ほんとに怖くないんだもん(爆)。本当にTV最強ホラーを目指したのかなあ。疑問疑問。怖がらせようという意図は、先日のCX『ほんとにあった怖い話SP』の方が断然上でした。


『予感』(監督・落合正幸
これは根本的なとこを間違えてると思う。「催眠」とか「雪山」とか撮ってるくせに、何故よりにもよって「世にも奇妙な物語」以外あり得ないってテイストの作品をここにもってくるんだろう。落合さんもいい加減ベテランなんだから、棲み分けぐらいしてほしいぞと思った。すんごい浮いてた。閉じこめられたエレベーターで自分以外の人間が全て幽霊だったということに後で気付きビビるというシーンにすら、恐怖演出をほどこさなかったのは何故なんだろう。ここで怖がらせなかったらどこで怖がらせるのかと問いたい。データを盗むという冒頭のエピソードも何がしたかったのかさっぱり。まさかとは思うけど、監視カメラを印象づけるためだけに作ったんじゃないよね。鉄骨が頭に直撃するシーンでかろうじて片足こちらの世界に突っ込んでたかなといった程度で、「結局『予言』『感染』の宣伝がしたかっただけかよ!」と突っ込まずにはいられない作品でした。


『金髪怪談』(監督・清水崇
オール・ハリウッドロケなのは『JUON/呪怨』の編集で日本に帰ってこられなかったからかな。『JUON』の息抜きに作ったって感じの作品で、自身の現在の状況をネタにしたパロディ。ただ、そこらへんの台詞は内輪すぎてあんまり面白くない(「日本のこわい夜」じゃなくて「清水崇特集」の一本として見せてくれた方が楽しめたかも)。パツキンねーちゃんはビジュアル的にホラーには向かないのか? いや、そんなことはないはずだ。だって、フランス人形ってめちゃめちゃ怖いし、昔の怪奇ものでも外国人がいい味出してる。それなのに、何かが足りない。何が足りないんだろう? 


『すきま』(監督・鶴田法男)
“怖さの追求”という点では『大生首』と共にちゃんとしてた作品。ただ、表現は頭打ちかなと。「すきま」を題材にした怪談話で一番怖いのは、「壁や箪笥の数センチのすきまに幽霊が詰まってる」っていう設定だと思うので、このタイトルにするならそこに挑んで欲しかったし、手の造形があれなんで、単に足の長いクモがすきまからはいでてくるみたいにしか見えないのが残念。幽霊というよりは異星人、異界人の侵略といった趣で、あまり怖くない。「手」自体が怖さの対象にならないのなら、「すきま」をもうちょっと怖くして欲しかったんだけど、いまいち「すきまが怖い」って感覚も伝わってこない。あれでどうやって畳の隙間から出てくるんだよー、みたいなね。せめてすきまからのぞかせるのが手だけであっても、その先に人体がつながってる、あのすきまに何か得体の知れない物体が潜んでるって感覚があればもうちょっとすきまそのもを怖いと思えたのに…。ここに出てくるすきまはその奥にある世界とこちらの世界をつなぐ出入り口でしかなくて、例えば、ドアの外にいて郵便受けから手を出してくるストーカーと、押入の中に潜んでてすきまから手を出してくるストーカー、どっちが怖いかって聞かれたら圧倒的に後者なわけで、常に何かがそこにいる、そこから飛び出してくる可能性がある、だからすきまをふさぐんだ、ふさがなきゃー、、、そういう恐怖感覚がここにはなかったように思う。山崎樹範は「ほん怖」の通常版にも出てたけど、彼を主演にしたほうが良かったかも。



OVホラーは物理的事情によりほとんど見たこと無いので、一番楽しみだったのが次の二人。
『大生首』(監督・白石晃士
主演の山田優ちゃんはホラーにむかない…(汗)。ホラー気質のある『アンテナ』で好演してた麻丘めぐみがキャスティングされてたのは個人的に嬉しかった。大生首にくわえられてデローンと身体を投げ出してるシーンは素敵。ただ、ごめんなさい、私、呪詛とか妖怪ホラーってまるで怖くない質なんで、古代の呪いの一種(?)として顔写真に落書きされるより、サイコパスなストーカーの妄執行為の延長で落書きされた方が、精神的にはくる。大生首の顔が呪詛かけてる村杉蝉之介だったら生き霊っぽくて気持ち悪かったかも(いや、逆に笑うか)。本作に関しては、監督とことごとく怖さのツボが違ってたのが残念。でも“大生首”って発想自体はすごく好きだ。しかし、あの大生首は何者なんだろうなあ。自分の身を生け贄にすることで災いを追っ払ってくれる、ちょっと意地悪な守り神ってことなんだろうか。


『くも女』(監督・中村義洋
5作品の中ではこれが一番好きでした。かなり笑った。くも女を目撃してベッドで寝込んでる女の子の顔が、楳図かずお古賀新一のマンガに出てきそうでナイス。しかもあんな早口で喋るとは(笑)。ココリコ遠藤のあたふたぶりも彼女の喋るリズムと合っててバッチリきまってたし、深浦加奈子がまた良かった。夕方になるとくも女に変身するおばちゃんの豹変顔や斜めにツツツー足だけパタパタパタッって動きも良かった。なによりも、口裂け女の話題で盛り上がってた幼少時代のあの感覚を随所で甦えらせてくれたのが嬉しい。脚本も兼ねてることを考えると、中村監督とは原体験が似てるのかも。やっぱくも女への貢ぎ物は虫だよなーとか。ちょっと小馬鹿にしつつも、実際にくも女らしき人物が目の前に現れた時の緊張感とかね。四つんばいで暗い住宅街を疾走する女の姿、そうそう、あんな感じだ。子供の時よく妄想したなあ。ラストのCGは萎えたけど、人力で頑張ってたくも女の表現の数々は大好きです。結局、Jホラーに求めてるのは郷愁なのか?>自分 


イントロダクション『こわい話、聞きたいですか?』(監督・中村義洋
白石加代子の話術は圧倒的だね。本編より面白いじゃないか(爆)。でも、これは比べたら可哀想なんだ。だって、人から聞く怪談話が一番怖いんだから。映画は原作を越えられないってのと同じ理論なんで、「白石加代子に2時間喋らせればいいじゃん」なんて言う奴は、テレビなんか見てないで白石加代子の「百物語」でも観に行けよと。しかし、このキャラクターをこのまま埋もれさせておくのは非常に惜しい。こわい話好きのおばちゃん、、、なんて素敵な設定。Jホラーシアター第2弾公開時にまたやるだろうからわくわくして待ってます。



TBSは「USO」の都市伝説シリーズが好評だったんだから、フジが「学校の怪談」シリーズをやらなくなった今、この路線でこれからもいけばいいと思う。下手に心霊実話とかいかなくていいから。ただ、「うちが一番怖い」とか煽るのはやめて。それは己の首をしめるだけだし、「怖くないからつまらなかった」て視聴者ばかり増やされても困る。


そんなわけで、レンタル屋で『ほんとにあった!呪いのビデオ2』中村義洋監督)と『呪霊』白石晃士監督)を借りてきました。『ほん呪』シリーズは1から順に見ようと思ってずっと手を出さずに置いてたんだけど、どうせ風邪が治るまで映画観に行けないし、揃う気配もないので借りて来ちゃいました。ついに『ほん呪』デビューですよー(わくわく)。感想は見終わったら。



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