エロス番長トーク、村上賢司×吉田良子×瀬々敬久

日本映画専門チャンネルか映画番長公式サイトで完全レポが載るかとおもったけど、無さそうなんでUPしておきます。8/29に行われたトークショーとメンツが被るので、多少ごっちゃになってるかもしれないけど、勘弁してください。


8/22(日)『ともしび』上映後に行われたトークショーに行ってきました。当初予定されていたゲストは青山真治×吉田良子×瀬々敬久の3名だったんですけど、青山監督が次回作の撮影準備のため欠席。代打として、試写で『ともしび』を誉めてたことから村上賢司監督が呼ばれ、軽快なトークで進行役を務めてくれました。



「何故、青山真治?」と思ったら、吉田良子監督が美学校の3期生として在籍していた時の担当講師が青山さんだったそうで、今回エロス番長の監修を務め、吉田良子監督を刺客として抜擢した瀬々監督のクラスになったことは一度もないらしい。それについて瀬々監督は「彼女は頭が良かったんで青山真治のクラスに入った。自分とこは落ちこぼればかりだから」などと武闘派らしい発言をしていた。


映画美学校には、最も優秀な脚本を書いた人に映画を撮らせるというスカラシップ制度があり、『ともしび』はそのときに書いたシナリオだという。当時は審査の最終選考で落ちてしまったが、審査員だった瀬々氏がそれを覚えていて今回声をかけたとのこと。瀬々さんとしては「いつか金儲けをしよう」と言って慰めた当時の約束を果たしただけのつもりだったが、当時の他の審査員によれば、吉田監督の脚本を落としたのは瀬々監督自身であり、「瀬々さんが吉田の脚本にダメ出して、他の脚本を強力に推したからじゃないか」と突っ込まれたそうだ。「結果的にこうやって金儲けできたんだからいいじゃないか。あの時世に出してたらきっとダメだった」と自己弁護する瀬々監督の横で苦笑する吉田監督であった。


試写で誉めたことがきっかけで呼ばれた村上賢司監督は、映画の感想を聞かれ、「今日ご覧になった方はどう思ったかわからないけど、自分は試写で観た時、大爆笑した」と語っていた。『ともしび』なんていうタイトルだから、女の子の気持ちをリリカルに描いた作品だと思ってたのに、途中で「あ、これ笑っていいんだ」と気付いてからは大笑いしたと。瀬々さんも、初めて観た時にやはり大笑いし、そう吉田監督に感想を伝えたら、そんなつもりはないと怒らせてしまったそうだ。でもほんとに笑える作品なんで、そこの所を村上氏が突っ込むと、「脚本を書いてる段階では笑わせようなんて気持ちは少しもなかった」と答える吉田監督。ところが、現場で主演の河井青葉に演出つけてるうちに、どうも彼女の動きがおかしいことに気づき、それをなんとかいかした方が面白いんじゃないかとあれこれ指示していったら、結果的に面白くなってしまった、ということらしい*1


「監督にとってのエロスとは?」と問われ、「触れられないことで感じるエロスってものがあるんじゃないかと思った」と語る吉田監督。ただ、瀬々さんによると、彼女の場合は、孤独なもの同士が触れ合わずに惹かれ合うというエロスじゃなく、あくまでも自分本位なもの、他者がない、オナニストだと。村上さんも「好きな男を抱いた女を抱くってのはある種対象をモノとして扱ってる行為ですよね」と述べていた。吉田監督によると、実際、最初の脚本では男性のキャラクターが全く描けてなくて、瀬々さんから何度もダメ出しされたそうだ。村上氏が男の職業について「電車の車内広告付けっていうんですか? あのシチュエーションはイイですよね」と誉めると、当初は就職活動中の学生って設定だったんだけど、それじゃあ面白くないと言われ、いろいろ考えて煮詰まってる時に、瀬々さんが「あれ、カッコイイよね」と言った一言で決まったと語る吉田監督に、すかさず村上監督から「そういうのは自分が考えたことにしとけばいいんだよ」とアドバイスが入る。またエロスの話に戻って、実生活でもオナニストなのかという問いに、吉田監督が「別にそういうわけじゃないですけど、対象がいないので」と答えると、「皆さん聞きました? チャンスですよ」と興奮する村上氏。「(チャンスって)お前のかよ」とすかさず突っ込む瀬々さんに「ボクには妻がいますから」と否定する村上さん。そんなやりとりがしばし続き、話を盛り上げようとすればするほどドツボにはまってく村上監督に場内爆笑だった。


エロス番長の残りの監督について問われ、瀬々さんは以下のように答えた。一番最初に参戦が決まってたのは脚本が存在してた吉田良子監督のみ。他はいろいろと打診してた中で西村晋也監督のものが形になり、ピンク界の重鎮である渡辺護監督に関しては長年温めてた脚本がありようやく形にする場ができたと。「ユダは?」と問われ「あれは左手でちょちょいと作った」としれっと答える瀬々監督*2。“エロス”とはなんぞやという問いには、「人間を描くことが最も重要。ホラーは算数が得意なヤツでも撮れるけど、エロスは女優さんに「脱いでください」と言わなければいけない。これは非常にカッコワルイ」と答える瀬々監督。「でも瀬々さんは女優さんに脱いでくださいと言い続けた人生ですよね、それでも慣れないですか? 女優さんに脱いで貰うにはどうやったらいいんですか?」とたたみ掛ける村上氏に、「こちらの熱意を伝えるしかない」と答える。村上氏がモデル出身の河井青葉にどうやってお願いしたのか吉田監督に尋ねると、彼女の場合は脚本を読んでくれた段階でOK貰ってたそうで、それでも正直不安だったから、撮影に入った後に「これぐらいは脱いで貰えたらいいなと思ってるんだけど」と確認したところ、笑顔で「いいですよ」と答えてくれたんそうだ。「瀬々さんに絡みの演出について何かアドバイスしてもらったか?」という問いには「ここでこう手を動かしてとかいうのは要らないから、どういう感じで撮りたいかというのだけ説明して、後は役者さんの流れに任せて、それをカメラにおさめればいいというアドバイスは貰った」と答えていた。同じ質問を瀬々さんにしてみると、「からみは役者に任せて、自分はただ気合いが乗り移るようにひたすら念じるだけ」とのこと。「言葉では言わないんですか?」と聞くと「アニマル浜口のように『気合いだ!気合いだ!』って言ってる」ということで、その後はオリンピック真っ最中ということもあり、空港で娘を見送るアニマル浜口の話題で盛り上がってた。


今後のことを聞かれ、「続けていくことが大事だと思うので、ちっちゃいことでもやっていきたい」と答える吉田監督、「余生を充実させたい」と答える瀬々監督、「次はボクも番長に参戦したい」と答える村上監督であった。

*1:村上氏から「なんだやっぱり(監督も)面白かったんじゃん」と突っ込まれ苦笑いする吉田監督。

*2:もちろん「左手かよ!」とすかさず突っ込まれるわけだが…(笑)。