『稲妻ルーシー』を観た(@ユーロスペース)

5/9(日)に行ってきました。上映前に西山洋市×高橋洋トークショーもあったため、客層は30代を中心に男性が7、8割方を占め、ほぼ満席。



映画の詳細は以前の日記を参照されたし。


実は、ロビーに貼られた星取表*1で一歩出遅れていたのが本作。監修にあたった塩田明彦氏からは大絶賛を受けてるのに何故だろうと不思議に思っていたが、観終わって分かった。好き嫌い別れるというより、ちょっと評価しにくいかも(苦笑)。コメディ作品を集めた『ワラ番長』シリーズだから、「一番笑えた映画はどれか?」と問われれば、迷わず『稲妻ルーシー』を挙げる。でも、“笑える”からといって“面白い”ってのとはちょっと違うんだな。この作品、ストーリーはあれどドラマがない。そのことをどう評価するかは個人の趣味嗜好にかかってくるのだろう。


トークショーで西山監督も言ってたけど、これは紛れもなく<コント集>であって<コメディ・ドラマ>ではない。個別の瞬発的ギャグや、次々と移りゆくネタの数々を楽しむために物語がある。ネタがバトンタッチされることで物語が次へと次へと動いてゆくんだな。その様は確かに気持ちいいし、笑いのおしりに次の笑いが重なり、くすくす笑いが延々と続く感じなんだけど、笑い有りきだから、エピソードが終わる毎に気持ちがいったんリセットされ、個々の笑いが全体的な面白さへとはつながらない。ドラマがないこともあって、映画的な「何か」を求めてしまうこちらとしては、どこか物足りなさを感じたり。ホラー映画で喩えるなら『13日の金曜日』ではなく『ヘンリー』といったところか。それ故に、自分がコメディ映画に何を求めているのかをはかるには、うってつけの作品かもしれない。私はコメディにもドラマ性を求める性質なのでノリきれなかった。


その場その場で思いつくままにウソを繰り出し周囲を振り回す、お騒がせ娘・ルーシー(佐藤仁美)。彼女にしては珍しく、棒読みに近い、無感情かつ抑揚のない台詞回しで淡々とルーシーを演じているのだが、どうもそれによってルーシーが持っているであろう悪意(佐藤仁美の暗黒面)が中和されてしまった感がある。感情自体が薄いというか、主役としての魅力が浅いというか…。イタズラが成功してもさして面白がってる様子はなく(そこがヘンリー的でもあったり)、ルーシー目線で周囲のドタバタぶりを楽しむ映画ではない。ちょっと心的距離を置いてしまうと言うか。振り回される側の人間も割とそうだったりするんで、例えば、ルーシーの仕掛けるいやがらせに屈しないライバル・高木ウノハナコ(今関朱子)との最終決戦(互いに銃口を向け撃ち合うシーン)なども、画的には「さあ、いよいよクライマックスよ〜」って感じでちょっとばかし盛り上がるのだが、一歩距離を置いて観てる分、気持ちがほとんど呼応しない。


主役である佐藤仁美、水橋研二より、戸田昌宏今関朱子の方が役柄的にはおいしかったかなと。特に戸田くんは、典型的なボケ役・泣かされキャラで、全てのシーンでキレイに笑いをとっており、ダントツに光り輝いてた。彼のシーンはどれも好きですね。それ以外だとオーディションに来たどうみても子役には見えない子役とその家族もかなり好き。水橋くんは少し割を食った感じ。今関さんは、眼帯してる時点で既に卑怯だったりするんですが、一カ所「おおーーーーーっ!」て驚きのシーンがあります(笑)。ちらしの写真がネタバレってるんだけど、全然予想してない展開だったので素直にウケた。無表情で逃げ去る様が「見たか、ルーシー。してやったり」って感じでまたいいの。あれはオイシイ…(笑)。



西山監督はこの後の「ホラー番長」シリーズにも参戦してるんだけど、ホラーはドラマがなくても全然OKなんで、このノリで不条理ホラーが展開されるのかと思うとワクワクします。


映画番長第1弾『ワラ(^O^)番長』シリーズの上映は、5/14(金)をもって無事終了。三作品に順位をつけるなら、『ロスト★マイウェイ』>『稲妻ルーシー』>『独立少女紅蓮隊』というのが私の好みです。次は第2弾『エロス番長』だ! 試写を見た人の感想がちらほら出てきてるけど、なかなかに評判よさげで楽しみ。



*1:チケットを買うとアンケート用紙が配られるのだが、面白さの度合いを5段階で評価するようになっており、結果は逐一星取表に反映される。9日の時点では、「ロスト★マイウェイ>独立少女紅蓮隊>>>稲妻ルーシー」といった感じで、他2作品に溝を開けられてる状態。