『盲獣VS一寸法師』を観た(@渋谷シネ・ラ・セット)

5/7(金)で上映が終了した『盲獣VS一寸法師』。予告で観たビデオ画質のあまりのしょぼさに、すっかり観る気失せてたんだけど、『土方巽〜夏の嵐〜』トークショーミヤコ蝶々のような生・石井輝男のご尊顔を拝んだら、そんな気持ちも吹き飛んでしまった(笑)。

というわけで、先週水曜日に観てきました。上映最終週にもかかわらず、7割ぐらいの入り。2割ぐらいが女性、しかもキレイ系のお姉さんが多くてビックリ。美女と野獣って感じで、作品とシンクロしとりました。


映画の詳細は↓以前の日記を参照。

んで、感想です。


非常に手作り感溢れる作品でした。大学の学園祭を訪ねたような感覚とでもいうのかな。「セットは美術部に頼もう」「主演はミス○○で決まり」「俺も出して」「俺も俺も」「死ぬ役でいい?」「ラストは△△教授に特別出演して貰うから」みたいな。お金が無いのは“努力”でカバー。みんなで作った作品なんだよという空気が全編に溢れてた。ロケ場所も実に試行錯誤されてて、昭和初期という時代設定を損なわないよう、着物や袴姿の人物が歩いてもおかしくないような家屋、塀、路地裏ばかりを集めてうまいことシーンをつないでおり、ロケハン・スタッフの努力には大きな拍手を送りたい。東京近郊ならロケ地MAPくれ。いや、「うまいことつないだ」ってのは言い過ぎた。だって、全然さりげなくないんだもん。人物より背景映したいのがミエミエで、「監督、人物見た方がいいの? 町並み見てていいの?」って迷うぐらい。


タイトルは『盲獣VS一寸法師』となってるけど、盲獣と一寸法師は最後まで対決しないし、交わろうとさえしない。明智小五郎が、ラストで二つの事件の関連について語るんだけど、かなりとってつけた感じ。結局、石井輝男は「盲獣」と「一寸法師」がやりたかっただけなんだな。リトル・フランキー演じる「一寸法師」の物語には「踊る一寸法師」のエピソードも盛り込まれており、生首持って踊り狂うシーンが見れるのかと期待したが願い通じず残念(リトル・フランキーは撮影後に亡くなっちゃったのでもはや無理。合掌)。


主演の橋本麗香とラストに1シーンだけ登場する丹波哲郎を見ると、その世界を作る上で役者の容姿が果たす役割は思ったより大きいなと感じた(ミッチーもしかり)。二人ともはったりのきく顔で、画面に映ると、一瞬にして周りの全てを昭和色に染める。そこに映ってるのが平成の現代ではなく昭和の風景と錯覚させるだけのパワーを持つ顔立ちなのだ。


拾いモノだったのが、リリー・フランキー。演技ではなく、彼の“声”。これが実に男前。今まで全然気づかなかったけど、ナレーションしてるときのリリー・フランキーの声は“いい男”ですよ、ほんとに。しかも、本作で共演してる塚本晋也は、ここ数年、私の中では“声のいい男グランプリ”トップ独走中だったもんで、これに肉薄するリリーさんと二人だけのシーンは涎水もんでした(笑)。


しかしエログロシーンでのテンションの高さを見ると石井輝男はまだまだ現役なんだなと思う。老成したところがまるでない。無邪気。「撮影も石井監督なんだよなあ」と想像しながら、おっぱい振り乱す藤田むつみを下からなめまわすカメラワークなんか見てると妙に愛しくなったり(笑)。でももう80歳(1924年生まれ)ですよ。あと何本乱歩作品が作れるのだろう。実相寺昭雄も67歳(1937年生まれ)だし、乱歩のあの世界を再現できる監督はみな残り短し恋せよ乙女状態。この世界を受け継げるあくの強い若手なんて出てこないし、、、長生きしてください。

盲獣VS一寸法師 [DVD]

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−追記−
渋谷シネ・ラ・セットでの追加上映決定!
期間は6/5(土)〜6/11(金)の1週間。今回はレイトショーではないです。


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