CX『放送禁止3〜ストーカー地獄編〜』を見た

26日深夜に放送されていたCX『放送禁止3〜ストーカー地獄編〜』を観ました。前2回は惜しくも見逃していたので、念願叶ってようやく視聴。内容としては以前フジテレビの深夜、NONFIX枠で放送されてた『放送禁止歌〜唄っているのは誰?規制するのは誰?〜 』の番組バージョンかと思ってたんだけど、なるほど、こういうことだったのか(笑)。


見逃した人のために説明すると、【1年前の2003年3月、とあるフリージャーナリストからの紹介で、ストーカー被害にあってる一人の女性の取材をテレビ局が行った。しかし、取材中に起こったある出来事のため、放送テープはお蔵入り。それを再編集し関係者の承諾を得て放送に踏み切ったのが今回の番組】ということらしい。



どうせ再放送はしないだろうから忘れないよう書き起こしちゃいます。
詳しい内容は↓こんな感じ。

番組はストーカー被害にあってる女性・佐久間希美さんの自宅マンションへ、フリージャーナリスト・筒井令子氏と共に訪ねてゆくところから始まる。筒井氏は埼玉県の大家族で起こった殺人事件の取材で脚光を浴びた若手ジャーナリストであり、自身も3年前、兄をストーカー被害で失ったという経験から、以来ストーカー被害についての取材を続けている。希美さんとはたまたま入ったお店で知り合ったとのこと。


希美さんがストーカーに悩まされるようになったのは半年前から。一番ひどいのは無言電話で、帰り道に誰かにつけられてる気配を感じることもあるという。そして先週、自宅に彼女の行動の一部始終を盗撮した写真が送られてきた。見せて貰った写真の裏面にはどれも手書きの文章が書かれていた。「覚えていますか?」「思い出してください」「いつも側にいます」そんな内容である。「知り合いや昔つき合ってた人で誰か心当たりはいないか?」と問うても心当たりはないという。最近では自宅のドアを叩いたり、チャイムを鳴らしたりするなど、行動がエスカレートしてきているとのこと。警察に相談したか?*1という話を聞いてる最中、突然、自宅チャイムが鳴った。一同に緊張が走る。応答しないでいると、尚も鳴り続けるチャイム。続いて乱暴にドアを叩く音。怯える希美さんの姿を見て、筒井氏がドア・スコープから外の様子を確認するが、玄関前には誰もいなかった。

ストーカー被害に詳しい弁護士・山田秀雄氏の話によると、ストーカー規制法が出来た平成12年より相談件数が2万件を越えたという。男女比で言うと、男性が加害者、女性が被害者である場合が圧倒的だが、男性の方が被害を届けにくいということもあるので必ずしも数字だけでは断定できないと言う。また“質”の面でみても、女性ストーカーの方が相当ひどく、粘着性の強いケースが多いとのこと。ストーカーの年齢としては30代の男性が20代の女性に行うというのが典型らしい。

スタッフは、郵便受けが置かれてるマンションの1階ホールと、希美さんの自宅前にカメラを設置し、ストーカー行為の決定的瞬間を捉えようと試みた。朝から丸一日撮影を続けていると、夜になって一人の男が現れた。男は郵便受けの中身を物色し、玄関前にやってきてチャイムを鳴らした。応答がないと、今度はドアを叩き、ノブをガチャガチャと回しながら「開けろ!」と怒鳴り続ける。しばらくしてストーカーは、1階の郵便受けに封筒を投げ入れ帰っていった。筒井氏とスタッフはすぐさま追いかけ、共に電車に飛び乗り、新宿まで尾行したが、繁華街で彼の姿を見失う。


翌日、希美さんにカメラが捉えたストーカー男の姿を見て貰ったが、帽子を目深に被ってることもあり、よく分からないと言う。筒井氏はストーカーが郵便受けに残していった封筒を彼女に渡した。中には写真が2枚入ってた。それは、希美さんが以前つき合ってた彼氏と撮った2ショット写真である。裏には「思い出せ」と書かれていた。ストーカーの正体はやはり彼女が以前つき合ってた男性のようだ。その1枚をよく見ると、背景に写ってる看板の文字が左右逆転していた。どうやらこの写真は裏焼きされたものらしい。


彼氏は3年前に仕事で知り合った人で、つき合ってしばらくして奥さんがいることがわかり、すぐ別れたという。しかし別れた後も、電話が頻繁にかかってきたり、メールが1日に20回も送られてくるなどしつこかった。相手にしないようにしていたが、家の周りをうろつくようになったので気持ち悪くなり、今の部屋に引っ越したという。「ストーカーが映ったビデオを警察に届けるか?」と問われ、「知り合いなのですぐに行こうとは思ってない」と答える希美さん。

精神科医春日武彦氏の話によると、ストーカーの相手が全くの見知らぬ他人と言うことはほとんどないとのこと。大概が、恋人か、元家族か、職場の同僚などの顔見知り。また普通ストーカーは自分のことをストーカーだとは思っておらず、むしろ自分は被害者だと、自分を裏切った相手に仕返ししてるだけなのだからと、自分を正当化してるケースが多い。そのため、しばしば被害者と加害者の関係が周囲から逆転して受け取られることもありやっかいだという。

ストーカー被害にあったことがある女性Sさんの話によると、彼女のストーカー相手も以前つき合ってた彼氏だったという。その彼は非常に暴力的で、別れた後もつきまとって復縁を申し込み、こちらが断ると殴ってきたという。階段の2階から突き落とされ怪我したこともあったそうだ。ある日、家の前で彼が車で待ってたことがあり、知らずに通りがかったSさんは、車の中で首を絞められそうになったという。殺されると思い、おもいっきり彼のお腹を蹴飛ばしたところ、フロントガラスが大破するほど頭をうちつけ、我に返った彼は、それ以来ストーカー行為をしなくなったという。

筒井氏は、再び希美さんの自宅マンションに現れたストーカーへ直接取材を試みた。するとストーカーは、「お前に何の権利があるんだ」と筒井氏に掴みかかり、止めに入ったスタッフの姿を見かけると「あの女に思い出せ!と伝えておけ」とだけ繰り返し、その場を立ち去った。


ストーカーが知り合いだと分かって以来、会社も休み、ほとんど食事もとらずに塞ぎ込んでる希美さん。心配した筒井氏は、元彼Aさんと直接対決するべく彼の会社に電話をかけることにした。しかしAさんはおらず、代わりに彼の同僚から意外な話を聞く。事実を確かめるべくAさんの自宅を訪ねた筒井氏は、そこで、今回のストーカー事件に関する恐るべき事実にたどり着く。



はたしてストーカーの正体とは。彼の行動の裏に隠された<真実>とは・・・。

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番組の最後には、延々と流れるサイレンの音とともに<真実>につながる様々なヒントが映し出される。そしてスタッフは視聴者にこう問い掛ける。

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「あなたには真実が見えましたか?」



画面暗転。



「これはフィクションです。しかし、ストーカー被害のデータは現実のものであり、以下の人物は実在します」



スタッフロールと共に映し出される3人の証言者。
「女性のストーカー行為は相当にひどく、粘着性の強いケースが多い」という弁護士。「首をしめられそうになり、もうこのままじゃ殺されると思った」というストーカー被害にあったSさん。「加害者は自分の方が被害者だと思っており、しばしば加害者と被害者の立場が逆転して周りに受け取られるのでやっかいだ」という精神科医



そして番組を締めくくったのは、鏡に映る錯乱した希美さんの姿だった。映像には消え入りそうなほど小さな音でニュース音声が被されていた。ボリュームを上げよーく聞いてみると、、、。

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最後に希美さんの姿を次のようなテロップが取り囲む。


「事実をいくつも積みあげたからといって、それが真実になるとは限らない」

あなたには<真実>が見えるでしょうか? 
是非、本編をご覧になって、映像の裏に巧妙に隠された<真実>にたどり着いてみてください。

放送禁止3 ストーカー地獄篇 [DVD]

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(※以下は結末に関するネタバレになっているため番組を観てから読まれることをオススメします。尚、感想は放送直後に書いたものであり、今現在とは多少見解が異なっております。内容に関し感想・ツッコミなどありましたら、改めて考察した↓こちらの記事にてお願いします)




番組の内容はこんな感じだが、いまいち<真実>が判然としないんだよなあ。


まず、揺るぎないと思われる部分は以下の通り。

  1. ジャーナリストの筒井氏は死んだAさんの妹である。
  2. Aさんは一時期希美さんと不倫関係にあったが、すぐ別れた。
  3. 地下鉄で電車を待っていたAさんは、希美さんの手によりホームから突き落とされ死んだ。
  4. 希美さんが犯人だと言うことを、筒井氏もAさんの家族も知っている*2
  5. ストーカーと筒井氏と奥さんはグル。テレビ局のスタッフは彼らに騙された。


お蔵入りになったVTRを再度見直した番組スタッフは、以上の5点に気づいたが、内容が内容なだけに<真実>をストレートな形で放送することはできない。だから、希美さんの最後の告白はオフレコにし、視聴者の判断に委ねる形でテープを再編集し放送に踏み切った、という設定なのだろう。だが、判然としないのは、<結局ストーカーをしたのはどっち?>てことなんだよね。ニュース音声だと希美さんがストーカーだったってことになってるが、それだとSさんの証言の後半部分が全く生かされないことになる。Sさんの証言を生かすためには、ストーカーをしてたのはAさんの方で、彼につきまとわれ身の危険を感じた希美さんが反撃に転じたと考えた方がしっくりくる。で、Aさんの死の真相を調べた筒井氏は犯人が希美さんだと知り、不倫ストーカーの事実と殺人のダブルショックで復讐を思い立ち、男を雇いストーカー行為を行わせ、希美さんの口から「Aさんを殺したのは私です」と告白させるべく、テレビ局の制作スタッフを巻き込み大芝居を打って出た…。うん。やっぱこっちだな。


で、結局のところ、筒井氏はどっちがストーカーだと思っていたんだろう。希美さんがストーカーだと思い込んでたのか、兄がストーカーだと思うのが嫌で希美さんの方がストーカーだと見えるような仕掛けを巻いたのか…。精神科医の言ってた「被害者と加害者の立場が周りには逆に受け取られるためにやっかい」という言葉、この<周り>というのは、Aさんの家族を指してるのか、それとも視聴者に向けての言葉なのか…。「裏焼きの写真」はAさんと希美さん、どちらのことを指しているのだろう。ストーカーの被害者はAさんなのか希美さんなのか…。うーん、知恵熱出そう(汗)。


とりあえず気に入ったので、スタッフ列記。

『放送禁止3〜ストーカー地獄編〜』
[企画・脚本・監督] 長江俊和 [ナレーター] 鈴木ゆうこ
[撮影] 平尾徹 [VE] 津田欽吾 [編集] 藤塚正明 [音響効果] 原田慎也 
[MA] 村上敏之 [TK] 黒岩ゆかり [AD] 土屋大路 
[技術協力] キックファクトリー/メディアハウス/ヌーベルバーグ
[プロデューサー] 春名剛生(フジテレビ)/角井英之  [編成] 浜野貴敏(フジテレビ)
[制作]フジテレビ/イース

ひとつ難を言わせて貰うと、これ、試みはすごく面白いんだから*3、まあ、役者の演技が演技臭いのはしょうがないとしても*4、撮影だけもうちょっとなんとかならんかなあ。映し方がドキュメンタリーの映し方ではなく、ドラマの映し方なのは勿体ない。小道具として使われた写真のアングルや構図もそうだし、写真の裏に書かれた文章の字体もやけに綺麗で、役者の人選も含め生活感がなく、緊迫感にかけてるのはなんともかんとも。やっぱねえ、“フェイク・ドキュメンタリー”ってのが最初からバレバレなのはいかん!(笑) 


でも、面白かった。次も期待。ついでに「1」と「2」の地上波再放送も切願!


−追記−
CX『放送禁止1』のあらすじを見つけた。
http://blog.livedoor.jp/fukubukuro/archives/49539.html
http://tokyo.txt-nifty.com/tv/2003/04/post_2.html(←上記ブログの移転先)
第1回目の放送は2003年4月2日深夜2:05からの放映だったようだ。何故エイプリルフールにしなかったのかと疑問を持たれてるようだが、制作陣としては「4月1日26:05 」って意識だったんじゃなかろうかと推察(いや、単なる“放送枠”っていう大人の事情にちがいない)。

というわけで、はてな以外へ初TrackBack


−追記(3月29日)−
↑のTrackBack先にコメントがついてたのですが、よそ様のお家で勝手にやりとりするのも気が引けるのでこちらで。

そう。確かにSさんが加害者だとうまく当てはまるんですよね。でも、番組上、Sさんは“実在の人物”ってことで顔出し*5で出演しており、スタッフが彼女を“被害者を装った加害者”と知っていながらそれを伏せてあえて出したのだとしたら、それこそ放送禁止だと思うのですよ。しかし実際問題、Sさんが被害者だとすると、後半の証言、すなわち「ストーカーに首を絞められそうになり身の危険を感じ反撃したら、相手が我に返って、以来ストーカー行為がおさまった」という話が余計なんですよね。被害者が加害者に殺されそうになって反撃したという話は本編に盛り込まれていないから。この証言さえなければ綺麗にまとまるのになあ。というわけで、スタッフ様、この部分カットして再編集し直して下さいまし(笑)。


−追記(4月1日)−
いやー、aaaさんの協力により、ついに全話のあらすじが揃いました(拍手)。ドラクエで石板揃った時のような感動だ(涙)。ありがとう、ありがとう。ネタバレされればされるほど見たくなるという不思議な魅力をもったこの『放送禁止』シリーズ。フジテレビのご意見掲示板での反響もすごいが、TrackBack先からこの記事へのアクセス数もついに255を突破*6。フジテレビさん、みんな待ってます。是非是非再放送を!


『放送禁止2』のあらすじ
http://www.punchtgk.com/mt/archives/000039.html
そのとき使われた心霊写真(ページの下の方に有り)
http://senntenn.tsukaeru.jp/reinousyakyoukai/honnbu/tv.htm

「2」をメモってた“どうバカ”のTGKさん、あんたはエライ!


−追記−(4月11日)
『放送禁止3』の<真実>について、私なりの見解をUPしました。こちらからどうぞ。


−追記−(4月23日)
演出の長江俊和とプロデューサーの角井英之は『奇跡体験!アンビリーバボー』のスタッフです。


−緊急告知(2004/11/10付)−
2004年11月17日発売予定のクイックジャパン最新号で『放送禁止シリーズ』が特集されるそうです。
詳しい経緯は「柿玉蔵の文芸誌批評(不定期)」を参照されたし。(kakiさん、ありがとう!)


−追記−
2005/10/12(水)26:25(すなわち10/13(木)2:25)からフジテレビで『放送禁止4』が放送されました。
2005/11/2(水)24:45(すなわち11/3(木)0:45)からUHB北海道文化放送で『放送禁止4』が放送されました。
2005/12/4(日)25:09(すなわち12/5(月)1:09)からTNCテレビ西日本(?)で『放送禁止4』が放送されました。
2005/12/24(土)27:45(すなわち12/25(日)3:45)から関西テレビで『放送禁止4』が放送されました。
2006/4/9(日)26:35-27:39(すなわち4/10(月)2:35-3:39)に東海地方で『放送禁止4』が放送されました。


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*1:警察には届けたとのこと。ただ親身になってくれたのは最初だけらしい。

*2:「新幹線(=のぞみ=希美)がパパを殺した」という息子の証言より

*3:ラストのどんでん返しへの持っていき方がCX『Trap TV』を思い出す。『Trap TV』に関しては以前の日記を参照。

*4:追記:これは意図的なんだそうだ。詳しくはクイックジャパンのインタビューを参照されたし。

*5:放送では実名(?)も出してます。Sさんにしてるのは個人的配慮。

*6:それ以上はカウントしないようなので実際は300越えしてると思われる