CX『MAESTRO』と月9『この世の果て』をつなぐ男・小木茂光

尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」で思い出したが、この歌が主題歌になってた月9『この世の果て』*1小木茂光が出ていた。彼が本作で演じたのは、マリア(鈴木保奈美)の母親(吉行和子)が営む店に板前として雇われた流れ者の男”佐々木さん”。自分の人生をめちゃくちゃにした悪女(横山めぐみ)を”この世の果て”まで連れて行くために街から街を旅して探し回っているという、非常にカッコイイ役どころである。小木茂光一世風靡セピアのリーダーと同一人物だと知ったのはこの時なのだが、役者としての彼を初めて知ったのは、この少し前、93年10月から始まった教養深夜番組CX『MAESTRO』が先だった。


CX『MAESTRO』というのは、93年10月から94年3月の半年に渡り火曜深夜枠で放映されてた30分の音楽教養番組である。毎回、クラシックの名曲を1曲取り上げ、楽曲の特徴や誕生秘話、作った作曲家の生涯などを、西村雅彦*2演じる”エストロ”と小木茂光演じる”コンサートマスター”が繰り広げるシチュエーション・コメディに絡めて紹介しており、クラシックに興味の無い人や初心者でも楽しく学べるというフジテレビお得意のあれです(現在放映中の『お厚いのがお好き?』なども同じ系統)。卑屈で頑固で我侭で、頼りなげだがどこか憎めないマエストロと、彼の愚痴やぼやきに付き合い、時に励ます、クールだが情に溢れたコンサートマスターのやりとりが実に面白く、一発で西村・小木両氏が好きになった。この番組の最終回、コンサートを終えたマエストロが、「おつかれさまでした」と暖かく見送るコンサートマスターに向かって、親愛の意を込め名前を尋ねるのだが、そのときに小木茂光が答えた名が「佐々木」。そう、同時期に最終回を迎えた『この世の果て』の役名と同じ「佐々木」だったのである。これねえ、どっちか片方の番組しか見てない人にはなんてことのない名だろうけど、両方を愛着もって見てたものにとっては思わずニヤリとするネーミングだったのよ。これは偶然じゃなく、狙ったんだろうな。そうであってほしい。


当時のフジ深夜番組はこれにかぎらず良作が多かった。バブルがはじけ、良質な深夜番組は一気に減ってしまったが、最近、また少し、当時の雰囲気をかもし出す深夜番組が増えてきた気がする。


*1:94年1−3月放映。プロデュース・大多亮 演出・中江功、林徹 脚本・野島伸司 出演・三上博史鈴木保奈美豊川悦司横山めぐみ桜井幸子大浦龍宇一 ※今期の月9『プライド』も同じスタッフなのに、この出来の違い

*2:当時、既に東京サンシャインボーイズの看板役者だった彼の初レギュラー作品