シリーズものの配役変更

ドラマ界でも、役者が亡くなったり引退したりで配役が変更になることはある。それがシリーズものだったり、二人一組で成り立っていた役柄の相方だったりした場合は結構な打撃と衝撃を視聴者にもたらすのだ。例えそれがドラマの本筋にはあまり関わってこない脇キャラだったとしても、コメディの場合などはドラマ自体の面白さをトーンダウンさせることにもつながる。


例えば、『ショムニ』の高橋克実伊藤俊人コンビ、『トリック』の生瀬勝久前原一輝コンビなどは良い例である。
伊藤俊人は『ショムニ・ファイナル』撮影直前のH14年5月24日、くも膜下出血のため急逝*1前原一輝は映画『トリック』の後、一身上の都合によりH15年4月30日をもって役者を引退*2した。どちらの作品もコメディであり、シリーズ3作目突入ということもあってコンビの息もピッタリ。視聴者の思い入れも強い。たまにしか見たことのない人にとっては「メインのキャラじゃないし代役でも支障ないんじゃない?」と思われるかもしれない。事実、高橋・生瀬の両氏は、一人でも十分キャラ立ちできる力を持っている。


でも、だめだったのだ


相方が変わっただけで驚くほどにキャラが立たないのだ。いっそのこと相方には拘らず、ピンキャラとして新しく仕切り直した方がいいんじゃないかと思ったぐらい。やはりどんなにうまい役者でも、受けに回った相手との相性・コンビネーションは重要だと思った。本人の力と同じぐらい、相方によって引き立てられてる部分は多かったのだろう。


−追記−
公式サイトに載せられていたという引退の挨拶を見つけた。以前にも見ているのだが、改めて読み返しても胸に痛い。いまだ「忙しいから『トリック』に出なかったんだ」と思ってる人がいるってのもね(しょんぼり)。


ファンの方々へのメッセージ


今まで応援して下さった方々へご報告させて頂きたい事がございます。
前原一輝」として約8年間、この芸能の世界で頑張ってきました。その8年の中で素晴らしいスタッフと出会い、素晴らしい作品に携わる事が出来、素晴らしい先輩との出会いの中で役者という貴い仕事が出来た事、全て独りの力では成しえなかった事だと思っています。
本当にたくさんの方々に助けられ、支えられてここまでやってくることが出来ました。
そして何よりも前原一輝を応援して下さった皆様に心から感謝しています。
これからの前原一輝に期待して下さっていた方々に対し、文面でのご報告は失礼とは思いますがお許し下さい。


私、前原一輝は平成15年4月30日をもちまして芸能界から引退させて頂くことに致しました。


ご報告が遅れてしまいましたが、悩み、考えた末に、引退という答えを出しました。
そもそも私はこの仕事を始めるにあたり、「役者」も生活を支える上でのひとつの「職業」だと考えておりました。しかし仕事をこなしていくにつれて、「役者」というのは生活の手段にはならないということに気が付きました。たぶん、人生そのものなのでしょう。当初考えていた人生設計からすると、一定の糧を得ることよりも「役者」のみに没入していくこの世界に少しずつ違和を感じ始め、不安にさいなまれるようにもなってしまいました。
もちろん私なりにこの仕事を選んだ以上貫こうと自分に言い聞かせ、努力してきたつもりですが、自分を取り巻く現実の生活に目を向けなければならなくなりました。
その葛藤にあった時、「壁」が邪魔をして前に進みづらくなった時、くじけそうになった時、常に前原一輝を応援して下さっている方々からたくさんのお手紙などを頂きました。出演した作品の感想、舞台上の私への励ましの数々、そのお手紙に勇気付けられ、支えられ、なんとか前に進むことが出来ました。
どんな言葉も陳腐になってしまう程感謝でいっぱいです。
しかし、自分が自分であることを私はどうしても優先したいと考えて今回の決断に至りました。


この8年間で皆様から頂いたもの、多くの人々に出逢えた事、全て私の思い出は今、素晴らしい財産となりました。少なからず人間として成長させてもらったとすればこの歳月のおかげです。
前原一輝を今まで本当に本当にありがとうございました!!」
今までの世界とは違う別の世界が今私の前に開けていますが、どこにいても一人の人間として輝き続けることは忘れない。このことを学んだつもりです。これだけは一番大切にして、これからの人生を着実に歩んでいきたいと思います。


お詫びと心よりの感謝に代えて


平成15年5月14日
前原 一輝


*1:享年40歳。22日に体調不良を訴え都内の病院に入院。そのまま還らぬ人となった。葬儀は29日午前11時より東京都中野区の宝仙寺で執り行われた。喪主は栄子夫人。葬儀委員長は三谷幸喜

*2:自身のHPにてファンに報告